大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和63年(わ)1848号 判決

国籍

朝鮮(慶尚北道迎日郡清河面下大里)

住居

愛知県一宮市下沼町二丁目一八番地の一

会社役員

石原竹雄こと

李桂雨

一九二九年六月二六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官西本仁久出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年及び罰金六五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、愛知県一宮市下沼町二丁目一八番地の一の肩書住居地に居住し、同県葉栗郡木曾川町大字里小牧字山方一番地五において、「コロンボ」の名称で、同県尾西市東五城字三味廓四七番地一において、「ニューコロンボ」の名称で遊技場(パチンコ店)を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、所得金額に関する収支計算をせず、適宜の過少な所得金額を計上するところのいわゆる「つまみ申告」を行う方法により、所得の一部を秘匿した上

第一  昭和五九年分の実際の所得金額が一億八一三四万五九〇二円であり、これに対する所得税額が一億一四一二万八二〇〇円であるのに、昭和六〇年三月一三日、同県一宮市栄四丁目五番七号所在の一宮税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四八二〇万円であり、これに対する所得税額が二二七三万六五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額九一三九万一七〇〇円を免れ

第二  昭和六〇年分の実際の所得金額が一億五二五二万六七三九円であり、これに対する所得税額が九三八二万六一〇〇円であるのに、昭和六一年三月一四日、前記一宮税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四八二三万二〇〇〇円であり、これに対する所得税額が二二七三万八三〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額七一〇八万七八〇〇円を免れ

第三  昭和六一年分の実際の所得金額が一億三九八八万五八五三円であり、これに対する所得税額が八五〇二万三六〇〇円であるのに、昭和六二年三月一二日、前記一宮税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四九五九万七〇六五円であり、これに対する所得税額が二三五三万二七〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額六一四九万〇九〇〇円を免れ

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の大蔵事務官(一七通)及び検察官に対する各供述調書

一  被告人作成の上申書

一  大蔵事務官作成の証明書(甲4)

一  李京子(三通)、李一男(三通)、金利鎬(二通)、長田豊(二通)、兼山絹江、川野秀人の大蔵事務官に対する各供述調書

一  検察官作成の電話聴取書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(一〇通)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書(甲1)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書(甲2)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書(甲3)

(法令の適用)

一  罰条

判示第一ないし第三の各所為 所得税法二三八条(懲役刑と罰金刑を併科)

一  併合罪加重 懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文一〇条により最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をする。

罰金刑につき刑法四五条前段、四八条二項により各罪所定の罰金額を合算する。

一  労役場留置 刑法一八条

一  刑の執行猶予 刑法二五条一項(ただし、懲役刑のみ)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 澤田経夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例